たむたむの「カバンを開けると日本が見える!」
カバンは所詮道具入れ・・・ だからそこには、目的があり意図がある。 そして、その作り手の意図が見えたとき、 カバンは単なる道具入れではなくなるのです・・・
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11月のカバン「鞄職人と呼ばれて・・・」


やー、みんな!
あっという間に11月に入ったね。今年ももうあと二ヶ月か・・・。
ほんと、一年が早すぎるよね。
そうそう、あと二ヶ月といえば、このコラムの連載も残すところ後二回なんだ。
なので、来月が最終回っていうわけ。
みんな、長い間つきあってくれて本当ありがとうね。

で、後二回、何を書こうかと考えたんだけど、やっぱり最後は自分のことかなと。
実はずっと昔僕は鞄職人と呼ばれることが嫌で仕方ない時期があったんだ。
でも、ある出来事がきっかけでそんな自分を見直すことが出来たんだ。


それは、こんな出来事・・・

僕が、大学を卒業してすぐにメーカの橋渡しみたいなことをしていたことは前にも述べたよね。
そう、大学時代アルバイトしていた鞄の小売屋さんが「Bobby's」っていうアパレルショップを開店して、
そのバッグ部門を任されて、その企画室とメーカーのサンプル室を行き来していたって話。
何年かはそんなことをしていたんだけど、あまりにしつこくサンプル師さんに付きまとうもんだから、
「ミシン上げるから自分で作り!」と言われ、ある頃から僕は自分で鞄を作るようになったんだ。

それから、又何年か過ぎ、周りからも「鞄職人さん」と呼ばれるようになり始めたある頃、
当時、月刊「サヴィー」の編集長だった須田悦子さんと顔見知りだった僕は、
ある取材の協力を頼まれたんだ。


内容は、「湊川・新開地地区の食べ歩き、店紹介」。
須田さんに連れられてやってきた記者が「餃子さん」と言うあだ名の窪田さん。
(いつも、餃子の王将Tシャツを着ていたのでこのあだ名がついたらしい)

この餃子さん。須田さん曰く、「一度、ふらりと出かけたら、
何ヶ月も連絡が取れない風来坊」とのこと。


なるほど、風貌はまさしく風来坊。髪はぼさぼさ、髭ぼうぼう。
ところが、当時の私も負けていない。
二人並んで歩いていると、まだ「地下鉄サリン事件」が起こる前だったが、
「公安に職務質問されるのでは?」と周りが心配するほどのうさんくささ。

そんな二人が、取材に出かけたのだが、似たもの同士やはり意気投合!
餃子さんは、僕が紹介した、お店の全てに大満足してくれた。
そんなこんなで取材後、飲みに行く事になったんだ。


最初は、非常に盛り上がった。

「イヤー。取材でこんなに楽しかったのは、久しぶりやね!」
餃子さん、上機嫌。


「そうや、今回の取材のタイトル
[こだわりの鞄職人が選ぶ、湊川・新開地グルメ]でどうやろ?」

「いえ、僕は鞄職人じゃないですから・・・」

このあたりから、話がおかしくなってきたんだ。

「何でや。鞄作ってるんやから鞄職人とちがうんか?」

「いえ、今鞄を作っているのは、
これまで仕事をしてきた流れで、たまたまです。」


それまで話をしていた中で、餃子さんが私の大学の同じ文学部の先輩で、
しかも仕事をこなしながら
「小説家になる」という夢も捨てていない事を知った僕は少し嫉妬していたんだな。

(餃子さんは自分がしたかったことをしている。)

その餃子さんに「鞄職人」と言われた事がたまらなく嫌だった。


「じゃあ。おまえはなんなんや?」

バブル全盛の横文字職業大流行の時代。

「出来れば、プランナーとかデザイナーと呼んで頂ければ・・・・」
餃子さん沈黙。

「ほんまにそう思ってるの?」

「餃子さんは知らないんです。僕が今まで出会った職人さんで、
外車に乗っている人もいなければ、大きな家に住んでいる人もいない。
皆、とっても苦しい生活をしている。」

「呼び方が、横文字に変われば外車にも豪邸にも住めるんや!」

「いえ、そうじゃなくって・・・・・。
大学出て、鞄職人と呼ばれたくないんです。」

「おまえ・・・・職人さんを思いっきり馬鹿にしてるな。」

「いいえ、馬鹿になんかしていません!」


そんな口論がいくつかあった後、餃子さんが最後に言った一言が

「おまえが作る鞄は、可哀想や!」だったんだ。

その意味がわかるまで、僕は何年もかかったんだ。

僕が、鞄職人という言葉を意識したのも、自分の仕事は何だと考え始めたのも
この事件がきっかけだった。

3ヵ月後、発刊された「サヴィー」の紙面には
どこにも[鞄職人]という文字は載っていなかった。



僕が、鞄職人になった理由。
それは、一言で言えば「たまたま」。
そう、そこには理由なんか無いんだ。あえて言えば「生きるため」。
だと思ってた・・・

でもね、今は違うんだ。

本当の意味を知るのは時間がかかるんだね。





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